富山市視察 – 自転車利用環境整備計画

11月8日から3日間都市環境委員会の視察で、
富山市、金沢市、安城市に視察に行ってきました。

今回は環境施策と自転車整備計画について勉強してきました。

まず富山市の富山市市民生活部生活安全交通課で
お話を伺った「自転車利用環境整備計画」について
ご報告します。
ちょっと長くなりましたが、とても良く調査され、策定された計画です。

富山市は人口417,046人。

富山RL1
写真は2006年4月に開業した路面電車「富山ライトレール」。
富山市に到着して委員みんなと乗りましたが、富山市内を
こうした路面電車が走り、環境への配慮が感じられる市でした。
こちらは後ほど報告させていただきますね。

さて、富山市自転車利用環境整備計画 TOYAMA BICYCLE PLAN
計画の期間は平成23年度から32年度。

富山市は環境モデル都市行動計画にCO2大幅排出削減として、
鉄道をはじめとし、公共交通を軸としてコンパクトなまちづくりの
基本方針が位置づけられ、環境負荷の小さい低炭素社会を
めざす取組みとして、自転車利用の見直しが進められていました。

「はしる」「とめる」「いかす」「まもる」の4つのテーマに分けて
「人」「まち」「自然」の3つの視点で取り組みまれています。

プロジェクトはそれぞれ実現に向けて「前期」「中期」「後期」の
目標を明らかにし、各区分で評価フェーズを入れ、必要に応じて
改善策を実施し成果に結びつけています。

4つのテーマ
・「はしる」(自転車走行空間整備):自転車ネットワークの形成、
自転車走行空間安全対策、統一的な案内サインや路面標示の導入
・「とめる」(駐輪環境整備):既存駐輪場の適正な利用推進、
新たな駐輪場の整備、駐輪環境の充実に向けた仕組みづくり
・「いかす」(自転車利用促進):自転車マップの作成で自転車利用の
促進に向けた情報発信の充実、自転車を楽しむためのモデルコースなどを紹介
・「まもる」(ルール遵守・マナー向上):自転車利用に関するルール・
マナーの啓発、駐輪マナーの周知、PR、ルール・マナーの意識啓発に
向けた仕組みづくり
  

1.アンケートの実施

安全で快適に自転車を利用できる環境づくり策定に向け、
市民へのアンケートを実施し実際の問題点を把握しました。

アンケートは6,000人(市民)、5,00人(高校生)を対象に
自転車利用の現状調査のために行われました。
市民では約半数、高校生では9割近くが自転車を利用。
それらのアンケート結果から以下の点が見えてきました。

・「はしる」走行環境整備
高校生は歩行者やクルマとの事故を経験した割合が高く、
約4割の市民が走りにくいなどと回答。
富山市内で自転車を走りやすくするために「走行位置の明確化」
などの回答が多くあげられる。 
自転車事故の発生状況は過去5年間で減少傾向となっているが、
都心地域では増加傾向、事故形態は出合い頭事故の割合が高く、
特に歩道を逆方向(右走行)による事故が多くなっている。
自転車走行環境に現状は路上駐輪による歩道幅員の減少、
路上パーキングによる車道空間の占有、交差点部における
自転車走行位置が不明確等。

・「とめる」駐輪環境整備
よく利用する駐輪場について、「商業施設等の駐輪施設」
「目的地に近い路上」となっており、駐輪環境を改善するための
施策として、「駐輪場の長期放置自転車を減らす」「小規模な駐輪場を
分散的に整備」「駐輪場の可能な台数を増やす」と言った回答があった。
富山市では富山市駅周辺の自転車放置禁止区域を条例により指定、
さらに毎年1,200台の自転車を撤去、過去5年間で撤去自転車の
廃棄処理台が5割を超えるが、平成21年度は返還台数やリサイクル台数の
割合が増。

・「いかす」自転車の利便性向上について
アンケート結果より、富山地域のレンタサイクルを増やす、
自転車が走る位置をわかりやすくする、自転車を気軽に利用するために、
散策マップを作成する、という意見があげられた。
富山市では平成16年度より無料レンタサイクル、自転車共同利用システム
「アヴェレ」を平成22年3月から全国に先駆けて導入。
自転車マップの作成、サイクルトレイン導入などを行っている。

・「まもる」ルールマナーの向上について
アンケート結果では市民・高校生の6割以上がルールを守ることを
意識しているが、その高校生のうち、正しい位置を走行しているのは
約6割で、約4割が間違ったルールを守ろうとしている。
自転車のルールやマナーに関する教育については、市民、高校生ともに
「小学校で教える」がもっとも多くなっている。

 富山市では主に小中学校などを対象に自転車安全教室を開催。
児童生徒や保護者を中心に参加。
主な内容としては自動車学校の教習コースを利用した実地訓練や
交通指導員による街頭キャンペーンが実施されていました。
 
2.計画策定体制 -検討委員会と専門部会- の立ち上げ

当計画の策定体制は、検討委員会と専門部会から構成されています。
検討委員会は各種団体や行政機関の代表者、学識経験者、公募市民など、広い範囲からメンバーを集め偏りのない提案が可能な体制にしました。

また、専門部会は「はしる」、「とめる」、「いかす」、「まもる」の
テーマ毎に分けた4専門部会で形成。
それぞれメンバーは各専門に詳しい交通事業者や行政機関、教育機関、
民間団体、市民団体などが入り幅広い意見を集約。
以上、これら「市民アンケート」、「検討委員会」、「専門部会」での
検討を重ねて「富山市自転車利用環境整備計画」が完成しました。

渋谷区として、自転車利用の環境整備にあたって都市環境や車両・
歩行者などの状況の違いはありますが、市民の声、検討委員会、
専門部会によって策定され、策定後はPlan(計画)、Do(実施)Check(評価)、
Action(改善)のPDCEサイクルによる進捗管理など、
こうした富山市の取り組みの視点はぜひ参考にし、渋谷区の施策にも
活かしていきたいな、と思いました。

次回は富山市の富山市自転車共同利用システム「アヴィレ」について
ご報告します。