富山市でインクルーシブなデイサービスを視察しました

福祉保健委員会の行政視察で富山市に来ています。
富山市は新幹線が通るようになって初めて訪れました。
駅舎はきれいに建て替えられ、駅前も整備がされて見違えるようになっていました。

富山市も気温が高く、日差しも強かったですが街の中にはお花や緑が多く、富山ライトレールが街中を走っていました。
富山市のお水はなんと2017年モンドセレクション金賞受賞!
今回は富山型デイサービスについて学びましたが、富山市は環境、まちづくり、福祉、子育て支援など力を入れています。
魅力のある富山市でした。

市内にはきれいなバスケットのお花、富山市庁舎、富山駅とライトレール、モンドセレクション受賞のお水

そんな富山市で「富山型デイサービス」について視察をいたしました。

「富山型デイサービス」は街中の施設や住宅を利用し、障害の有無にかかわらず、地域に住む子高齢者から乳幼児まで幅広い年齢層の方々を受入れているデイサービスです。
高齢者や障害のある人たちが同じ場所で同時にサービスを受け入れることで活気が生まれています。

この事業のはじまりは、今から25年前の平成5年に富山赤十字病院を退職した3人の看護師さんが開所したデイケアハウスでした。
看護師として働いていた当時、お年寄りの命を病院でいくら助けたとしても、「最後は家に帰りたい」、「畳の上で死にたい」とお年寄りが泣いている場面をたくさん見てきたそうです。
そんな中、訪れた老人ホームでは生きる気力もなくしているかのようにご高齢者が話もせず、1日を過ごしている姿を見て違和感を感じたそうです。

それを見て高齢者も子どもと一緒に笑ったり怒ったり歌を歌ったりする事はどんなリハビリよりも良い。
子どもがいればリハビリをする必要がない、と赤ちゃんからお年寄りまで障がいのあるなしにかかわらず受け入れたデイケアハウス「このゆびとーまれ」をはじめて、後に富山型と言われるデイサービスとなったそうです。

「富山型デイサービス」は「小規模」「多機能」「地域密着」がキーワード。
「小規模」:一般住宅をベースとして利用定員が15名程度で家庭的な雰囲気が保たれています。
「多機能」:高齢者、障害者、障害児、乳幼児など利用者を限定せずに誰でも受け入れ対応すると言う驚くべきデイサービスです。
「地域密着」:住宅地の中に立地しているため地域の福祉拠点として地域との交流も多いとのこと。地域の人たちが気軽に相談でき、町会に加入し、地域密着のデイサービスだそうです

国の制度では高齢者=老人福祉法、身体障がい者=身体障がい者福祉法、知的障がい者=知的障がい者福祉法、障がい児=児童福祉法のそれぞれの法律により施設の整備は神の基準が定めらており、平成5年の開所当初は行政からの支援は無く、すべて自主事業としてスタートをしました。
その後少しずつ行政からの補助金を確保していき、介護険制度が開始した年には、介護保険制度の通所介護事業所としての指定を受け、身体障害者については介護保険制度の通所介護事業所を利用した場合新制度の報酬が適用されます。
そして富山型デイサービス推進特区を申請、平成15年11月に認定され介護保険上の視点から通所介護事業等での知的障害者、障害児のデイサービスの利用が可能となったそうです。

この富山型デイサービス推進特区は障がい児・障がい者と高齢者の垣根を低くし平成18年には全国展開へとなりました。
また富山型福祉サービス推進特区は小規模多機能型居宅介護事業所でこちらも富山型のサービスとして全国展開となったそうです。

富山型デイサービスのメリットは高齢者にとってはお子さんと触れ合うことで自分の役割を見つけ、意欲が高まり日常生活の改善や会話の促進へとつながります。
障害者にとっては居場所ができることで自分なりの役割を見出し、それが自立へとつながっていく効果があります。
特別支援学校に中学からこのデイサービスに通っていた利用者さんは自分の意思でこのデイサービスで働き、高齢者や子供たちの世話をしまたゴミ出しや車の掃除、掃除機をかけられるようになったそうです。
そして子どもたちにとっては高齢者や障害がある人など他人への思いやりや優しさを身に付ける教育面の効果があるそうです。
また地域にとっても地域の方が持ちかけてくる様々な相談に応じることによりこのデイサービスが地域住民の福祉拠点としての効果もあります。
現在この富山型デイサービスの事業所数は富山県内では188カ所、全国では1,060カ所あるそうです。

福祉と言うとどうしても高齢者福祉、障害者福祉と分けられてしまい、乳幼児との連携は結びつかない縦割りの仕組みです。
また高齢者福祉は現在介護保険サービスに直結する中で、富山市のこの取り組みは行政にはない民間の柔軟な発想に基づいて誕生したサービス形態でした。
そしてそれを行政がバックアップをし全国に発展拡大としたと言う素晴らしい取り組みでした。
ひとつ屋根の下にシニア、障害者、障害児、子育て中の親御さん、そして子どもたちが一緒になって過ごす場所、まさにインクルーシブな取り組みは渋谷区においても取り組んでみたい事業でした。

富山市の職員のみなさま、ありがとうございました。