フリースクール「スマイルファクトリー」視察レポート
2017年01月04日
12月半ば、所属会派「シブヤを笑顔にする会」のメンバーで大阪に視察に行ってきました。
大阪府池田市にあるフリースクール「スマイルファクトリー」の視察についてレポートさせていただきます。
スマイルファクトリーエントランス
その前にフリースクールについて簡単に説明させていただきます。
「フリースクール」とは不登校の子どもたちを対象に学習指導要領などにとらわれず、公立校とは異なる教育を行う民間やNPOなどが運営している教育施設です。
ようこそスマイルファクトリーへ
ここで「不登校」についても少し説明します。
4月1日から翌3月 31 日までの1年間に、連続又は断続して 30 日以上欠席した児童・生徒を「長期欠席者」としています。
文部科学省による「不登校」の定義とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)、とのこと。
ふと疑問なのが、なぜ「経済的理由のものを除く」のか、という点。
経済的理由で長期欠席となっている児童・生徒は経済的理由ということで何ら対応されていないとしたら大きな問題ですよね。
経済的理由なら必要な支援も明確で、その子の将来のためにも引き続き通学できるよう何らかの対応をするべきと思います。
東京都教育委員会の「不登校・中途退学対策検討委員会 報告書」によると、現在小・中学校(以下「中学校」には中等教育学校前期課程を含む。)の長期欠席者は、平成 26 年度は全国で 185,051 人に上り、都内公立小・中学校においては 13,348 人(小学校 4,697 人、中学校 8,651 人)です。
不登校の児童・生徒は、平成 26 年度には、全国の小・中学校で 122,897 人に上り、都内の公立小・中学校においては、10,079 人。
全児童・生徒数に占める割合(出現率)についても、平成 25 年度以降増加しており、平成 26 年度は小学校で 0.46%、中学校で 3.17%となっており【図表 02】、小学生 217 人に1人、中学生 32人に1人の割合で不登校の児童・生徒が出現しています。
また、1校当たりの平均不登校者数は、小学校 2.0 人、中学校 11.9 人。なお、出現率の全国平均(平成 26 年度)は小学校で 0.39%、中学校で 2.76%となっており、都内公立小・中学校の出現率は、全国平均よりも高い割合です。
フリースクールは公的な学校と認められず、義務教育期間は、その通っていた学校に籍をおいていいる状態となります。
つまり公立校とフリースクールの二重学籍になっており、不登校児の実態が把握しづらいという課題もあります。
さて「スマイルファクトリー」についてです。
現在、「スマイルファクトリー」は大阪府池田市の閉校となった伏尾台小学校の校舎でスクーリングを行っています。
白井先生とお話
当日、スマイルファクトリー校長の白井智子先生から直接お話を伺いました。
以前、ある雑誌のインタビューのページで見たことのある白井先生、明るく弾けるような笑顔で私たち5人を迎えてくださいました。
白井先生は私たちの対応のあと、すぐに東京に移動というお忙しいスケジュールの中、時間を作って下さいました。
「スマイルファクトリー」は13年前の2003年に「山の家」として池田市の教育委員会から受託という形でスタート、当時は相談事業と週4日の不登校生のためのスクーリングだったそうです。
初期の頃は「山の家」にお世話になることは学校の恥と言われることもあったそうですが、「山の家」を経て学校復帰する子どもたちがでてくるようになり、学校の対応も少しずつ変化したそうです。
2007年からは「スマイルファクトリーハイスクール」が開始。
星槎国際高等学校の「技能連携校」として提携し、高校の単位や卒業資格を取ることができるコースを用意されました。
これをきっかけに自立をより強く意識した機関と変わったそうです。
池田市から5,000万円の予算でフリースクール(小中高)、相談事業、放課後デイを運営しています。
白井校長からお話を伺い、朝のミーティングを見させていただきました。
連絡事項の伝達、前日の生徒が考えた「あるなしクイズ」の正解発表。
ミーティングは全員参加型で和気あいあい。
帰りのミーティングでは「今日のMVP」という形でその日一日の嬉しかったことや親切にしてもらったことの発表の機会を設けているそうです。
例えば「〇〇を貸してもらいました」「ドアを開けてもらいました」など。感謝されることや発言するきっかけにつながりますね。
現在スタッフは小中学校の主任職員3名を含めて20名、様々な経歴のスタッフがいらっしゃるとのことで、航空機の元整備士さん、臨床心理士、元バスケットの選手、塾の先生など。
実際に私たちが見学させていただいた授業は児童、生徒たちがそれぞれ興味のあることに取組んでおり、先生たちが対応していました。
教室は生徒たちに合わせて完全に個室で過ごせる部屋、パーテーションで区切られた部屋、みんなと一緒にそれぞれが受けられる教室などがありました。
教室を見学していた私たちに子どもたちは気さくに話しかけてきてくれました。
現在100名弱の不登校児通っているという「スマイルファクトリー」、池田市内の子どもたちが対象ですが、池田市外の子どもが通う場合は定員に空きがあれば毎月 28,000円で可能だそうです。
有料でスクールバスでの送迎も利用ができます。
みんながランチをする教室は、この日はクリスマス前ということもあり、生徒たちがデコレーションした素敵なランチルームになっていました。
カラフルな飾り付けが楽しいですね。
現在はお弁当だそうですが、今後は「こども食堂」もはじまるそうで、子どもたちは「スマイルキッチン」を利用することもできるそうです。
廊下や階段にはユニークなでも効き目のありそうな注意喚起のポスターが貼ってありました。
美大出身の先生が描いたそうです。これを見ると絶対走るのはやめようと思いますよね。
私たちが行った日、玄関にきれいなお花が飾られていました。
花壇の手入れなど、地域のみなさんの協力も「スマイルファクトリー」には欠かせない存在だそうです。
「スマイルファクトリー」がある旧伏尾台小学校が閉校になった背景に、小学校周辺は約30年前に開発されたニュータウンであり、この地域が高齢化、少子化となったことから、「スマイルファクトリー」は教育活動だけでなく、教育を中心とした地域の活性化、まちづくりにも取り組むことが求められています。また、地域の方々も学校に協力してくださるそうです。地域と学校、お互いが働きかけ共生する姿勢がそこにはありました。
外には卓球台が。
この日はあいにく寒い日でしたが、お天気の良い時は生徒たちはここで卓球を楽しむそうです。
私もこれまで何度かフリースクールについて渋谷区の保護者の方に聞かれることがありました。
お子さんが学校に行けなくなってしまい、フリースクールを考えているのだけれど、近くでフリースクールがありますか?など。
様々な理由から不登校になってしまうお子さんがいる中で、こうした情報を知りたいという思いつつも、民間のフリースクールの情報はほとんど入ってこないため、お役にたてない状況でした。
そんな中、不登校の子供の学校外での学びを支援することを明記した「教育機会確保法」が昨年12月7日の参院本会議で可決、成立しました。
不登校の子の教育機会の確保のため、国や自治体が必要な財政支援に努めることなどが盛り込まれています。不登校の子どもが学校以外の場で行う「多様で適切な学習活動」や、個々の子どもの「休養の必要性」を踏まえ、国や自治体が子どもや親に情報提供するなどとした。となっています。
教育委員会が設置する適応指導教室(渋谷区では「けやき教室」)のあり方も重要です。ここをきっかけに学校に戻った子どもたちもたくさんいます。
池田市の「スマイルファクトリー」を経て学校に戻る子どもたちもたくさんいることから、それぞれ取り組みの特色に違いはあっても、大切なのは子どもたちの居場所、そして受け入れてくれる場所が見つかり、学びながらそこから次のステップに行けることだと痛感しました。
公立の学校もその「子供時代の居場所」というステップの1つの通過点に過ぎないのでは、と思います。
大切なのは、子どもが居場所を見つけ、その居場所でしっかりと学び、成長していくことなのだと思います。
学校に行けなくなってしまった子どもたちの将来を考えると、適応指導教室だけでなくフリースクールという選択もあっても良いと思います。
渋谷区の現状やニーズにあわせてどういう提案や活動ができる、考えていく必要があると実感しています。
フリースクールについて今後、自治体がどのように動いていくのか楽しみです。
大阪府池田市にあるフリースクール「スマイルファクトリー」の視察についてレポートさせていただきます。
スマイルファクトリーエントランス
その前にフリースクールについて簡単に説明させていただきます。
「フリースクール」とは不登校の子どもたちを対象に学習指導要領などにとらわれず、公立校とは異なる教育を行う民間やNPOなどが運営している教育施設です。
ようこそスマイルファクトリーへ
4月1日から翌3月 31 日までの1年間に、連続又は断続して 30 日以上欠席した児童・生徒を「長期欠席者」としています。
文部科学省による「不登校」の定義とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)、とのこと。
ふと疑問なのが、なぜ「経済的理由のものを除く」のか、という点。
経済的理由で長期欠席となっている児童・生徒は経済的理由ということで何ら対応されていないとしたら大きな問題ですよね。
経済的理由なら必要な支援も明確で、その子の将来のためにも引き続き通学できるよう何らかの対応をするべきと思います。
東京都教育委員会の「不登校・中途退学対策検討委員会 報告書」によると、現在小・中学校(以下「中学校」には中等教育学校前期課程を含む。)の長期欠席者は、平成 26 年度は全国で 185,051 人に上り、都内公立小・中学校においては 13,348 人(小学校 4,697 人、中学校 8,651 人)です。
不登校の児童・生徒は、平成 26 年度には、全国の小・中学校で 122,897 人に上り、都内の公立小・中学校においては、10,079 人。
全児童・生徒数に占める割合(出現率)についても、平成 25 年度以降増加しており、平成 26 年度は小学校で 0.46%、中学校で 3.17%となっており【図表 02】、小学生 217 人に1人、中学生 32人に1人の割合で不登校の児童・生徒が出現しています。
また、1校当たりの平均不登校者数は、小学校 2.0 人、中学校 11.9 人。なお、出現率の全国平均(平成 26 年度)は小学校で 0.39%、中学校で 2.76%となっており、都内公立小・中学校の出現率は、全国平均よりも高い割合です。
フリースクールは公的な学校と認められず、義務教育期間は、その通っていた学校に籍をおいていいる状態となります。
つまり公立校とフリースクールの二重学籍になっており、不登校児の実態が把握しづらいという課題もあります。
さて「スマイルファクトリー」についてです。
現在、「スマイルファクトリー」は大阪府池田市の閉校となった伏尾台小学校の校舎でスクーリングを行っています。
白井先生とお話
以前、ある雑誌のインタビューのページで見たことのある白井先生、明るく弾けるような笑顔で私たち5人を迎えてくださいました。
白井先生は私たちの対応のあと、すぐに東京に移動というお忙しいスケジュールの中、時間を作って下さいました。
「スマイルファクトリー」は13年前の2003年に「山の家」として池田市の教育委員会から受託という形でスタート、当時は相談事業と週4日の不登校生のためのスクーリングだったそうです。
初期の頃は「山の家」にお世話になることは学校の恥と言われることもあったそうですが、「山の家」を経て学校復帰する子どもたちがでてくるようになり、学校の対応も少しずつ変化したそうです。
2007年からは「スマイルファクトリーハイスクール」が開始。
星槎国際高等学校の「技能連携校」として提携し、高校の単位や卒業資格を取ることができるコースを用意されました。
これをきっかけに自立をより強く意識した機関と変わったそうです。
池田市から5,000万円の予算でフリースクール(小中高)、相談事業、放課後デイを運営しています。
白井校長からお話を伺い、朝のミーティングを見させていただきました。
連絡事項の伝達、前日の生徒が考えた「あるなしクイズ」の正解発表。
ミーティングは全員参加型で和気あいあい。
帰りのミーティングでは「今日のMVP」という形でその日一日の嬉しかったことや親切にしてもらったことの発表の機会を設けているそうです。
例えば「〇〇を貸してもらいました」「ドアを開けてもらいました」など。感謝されることや発言するきっかけにつながりますね。
現在スタッフは小中学校の主任職員3名を含めて20名、様々な経歴のスタッフがいらっしゃるとのことで、航空機の元整備士さん、臨床心理士、元バスケットの選手、塾の先生など。
実際に私たちが見学させていただいた授業は児童、生徒たちがそれぞれ興味のあることに取組んでおり、先生たちが対応していました。
教室は生徒たちに合わせて完全に個室で過ごせる部屋、パーテーションで区切られた部屋、みんなと一緒にそれぞれが受けられる教室などがありました。
教室を見学していた私たちに子どもたちは気さくに話しかけてきてくれました。
現在100名弱の不登校児通っているという「スマイルファクトリー」、池田市内の子どもたちが対象ですが、池田市外の子どもが通う場合は定員に空きがあれば毎月 28,000円で可能だそうです。
有料でスクールバスでの送迎も利用ができます。
カラフルな飾り付けが楽しいですね。
廊下や階段にはユニークなでも効き目のありそうな注意喚起のポスターが貼ってありました。
美大出身の先生が描いたそうです。これを見ると絶対走るのはやめようと思いますよね。
私たちが行った日、玄関にきれいなお花が飾られていました。
花壇の手入れなど、地域のみなさんの協力も「スマイルファクトリー」には欠かせない存在だそうです。
「スマイルファクトリー」がある旧伏尾台小学校が閉校になった背景に、小学校周辺は約30年前に開発されたニュータウンであり、この地域が高齢化、少子化となったことから、「スマイルファクトリー」は教育活動だけでなく、教育を中心とした地域の活性化、まちづくりにも取り組むことが求められています。また、地域の方々も学校に協力してくださるそうです。地域と学校、お互いが働きかけ共生する姿勢がそこにはありました。
この日はあいにく寒い日でしたが、お天気の良い時は生徒たちはここで卓球を楽しむそうです。
私もこれまで何度かフリースクールについて渋谷区の保護者の方に聞かれることがありました。
お子さんが学校に行けなくなってしまい、フリースクールを考えているのだけれど、近くでフリースクールがありますか?など。
様々な理由から不登校になってしまうお子さんがいる中で、こうした情報を知りたいという思いつつも、民間のフリースクールの情報はほとんど入ってこないため、お役にたてない状況でした。
そんな中、不登校の子供の学校外での学びを支援することを明記した「教育機会確保法」が昨年12月7日の参院本会議で可決、成立しました。
不登校の子の教育機会の確保のため、国や自治体が必要な財政支援に努めることなどが盛り込まれています。不登校の子どもが学校以外の場で行う「多様で適切な学習活動」や、個々の子どもの「休養の必要性」を踏まえ、国や自治体が子どもや親に情報提供するなどとした。となっています。
教育委員会が設置する適応指導教室(渋谷区では「けやき教室」)のあり方も重要です。ここをきっかけに学校に戻った子どもたちもたくさんいます。
池田市の「スマイルファクトリー」を経て学校に戻る子どもたちもたくさんいることから、それぞれ取り組みの特色に違いはあっても、大切なのは子どもたちの居場所、そして受け入れてくれる場所が見つかり、学びながらそこから次のステップに行けることだと痛感しました。
公立の学校もその「子供時代の居場所」というステップの1つの通過点に過ぎないのでは、と思います。
大切なのは、子どもが居場所を見つけ、その居場所でしっかりと学び、成長していくことなのだと思います。
学校に行けなくなってしまった子どもたちの将来を考えると、適応指導教室だけでなくフリースクールという選択もあっても良いと思います。
渋谷区の現状やニーズにあわせてどういう提案や活動ができる、考えていく必要があると実感しています。
フリースクールについて今後、自治体がどのように動いていくのか楽しみです。
今回伺った「スマイルファクトリー」のホームページはこちらです。
https://www.npotoybox.jp/toybox/projects/smile-factory/
https://www.npotoybox.jp/toybox/projects/smile-factory/