渋谷区議会で「セクシュアルマイノリティに関する議員と職員向けの研修会」が開催されました。
2016年02月13日
渋谷区議会で議員と職員向けの研修会が開催されました。
テーマは「セクシュアルマイノリティ、その多様な性を知るために」。
講師はLOUDの大江代表と小川副代表はレズビアンカップル。
そのお二人から「多様な性」について、セクシュアルマイノリティが抱える諸問題についてなど伺いました。
お二人の過去の経験や体験を伺いながら、私が「たまたま異性愛者に生まれた」ように、彼女たちも「同性愛者に生まれた」だけ、なんだということ、それは私が日本人として生まれたのと同じで、生まれた時からそうだったということ、更にご家族との関係や職場でのつらい経験などをお話いただき、セクシュアルマイノリティのみなさんが抱える問題をあらためて知ることとなりました。
最初に
「これから話すことについて不快に感じることがあるかもしれません。
ご自分の中で”何が不快なのか?”を知ってください。
「知らない」はみんなが持っている平等の機会です」
という言葉から研修がスタート。
真っ新な気持ちで聞くことができました。
まずセクシュアリティ(性の在り方)に関する用語から。
下記の用語説明を、自分に当てはめてみました。
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セックス(sex):身体的性別、外性器の形状で判断される性別。「男女」に分かれる
- 私は「女」に該当
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「性自認」(gender identity):自分自身の性別をどう感じ、捉えているのか?ここでの捉え方が身体的性別と異なるとトランスジェンダーとなる
- 私は「女」に該当
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「性(的)指向」(sexual orientation):恋愛や性愛を含んだ他者との関係をどうしたいのか?異性(ヘテロセクシュアル)、同性(ゲイ・レズビアン)またはどちらにも(バイセクシュアル)
- 私はここは「異性」
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ジェンダー(gender):「男性はこうあるべき・男らしい」「女性はこうあるべき・女らしさ」と言った男女の性別、性役割に対する固定的、しばられた考え。社会的に作られた男女の概念。
- 「女の子らしくしなさい」「女性なんだから」と言われた経験は多々あります。
印象に残ったこと-1
最近は国連の関係機関などによりSOGIという考え方が主流となってきているんだそうです。
SOGI = Sexual Orientation and Gender Identity
上記の「性指向(sexual orientation)」は全ての人に該当します。
同じく上記の「性自認」(gender identity)も全ての人が該当します。私はたまたま「女」であったということ。
だとすると今後は「セクシュアルマイノリティ」と「マジョリティ」に分けられことではなく、全ての人たちがそれぞれ当てはまるカテゴリー存在するということですよね。
うーん、これにはハッと気づかされました。自分もカテゴリの中のひとつの存在であるにすぎない、ということを。
これまで世界、日本では同性愛者の人たちが差別や偏見で辛い思いをしてきたのは事実。
1990年、WHO(世界保健機関)は同性愛を治療の対象から除外し、日本精神神経学会は1995年に削除。それまでは同性愛者の人たちは電気ショック等の治療をされていたということもあったそうです。
1996年には当事者団体からの申し入れによって広辞苑が記述の変更を行ったそうです。
以前は広辞苑で「同性愛者」をひくと「異常性欲」という記述だったそうです。
渋谷区議会図書室の広辞苑を調べたところ、現在の2008年1月11日の第6版では同性愛者は「同性の者を性欲的欲望の対象とすること」⇔ 異性愛 とありました。
今では当たり前のネット社会ですが、私がインターネットを使用し始めたのは1990年後半だったと記憶しています。
それまでは何を調べるにも百科事典や辞書をつかって調べました。
自分が該当するであろう言葉を調べて「異常」とでていたらそれはショックですよね。
自分が社会に容認されていない「異常」という存在であることがわかったら、親にも友達にも兄弟姉妹にも相談できない、というのは辛すぎる現実です。
ここでLGBT、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)とは
日本では2015年電通ダイバーラボが実施した調査によるとLGBT層の比率は7.6%という調査結果です。
米国でも数十年前の調査で5%、英国では6%とのこと。
L:レズビアン
G:ゲイ
B:バイセクシュアル
T:トランスジェンダー(性同一性障がい)
Xジェンダー:ジェンダーを固定化されたくない立場の人たち
アセクシュアル:性愛、恋愛の欲望が無い人たち
アライ:英語の"ally"からきています。"ally"は協力者、味方、同盟国と言う意味。
当事者では無いけれどサポートする人たち。私はアライの立場でパートナーシップ証明書の提案をし、現在もサポートしようとしています。
気を付けたい用語として
「性的嗜好/フェティッシュ」:こちらは趣味的な意味が強く、「性的指向」とは意味が大きく異なります。
関連する物や物としての肉体の執着、性欲の対象であり、同性との交際や性行為が対象ではないため、これらのフェティシストの人とLGBTというのはまた次元の違う話ですのでご注意くださいね。
「セクシュアルマイノリティが抱える諸問題」
これについては想像していた以上に多方面にわたる問題がありました
- 社会からの偏見や差別が存在するため、容認されることが困難。将来の展望が見えない。
- 自分を偽る場面が発生するため、ストレスが絶えない。その思い悩む結果から自殺を考えてしまうこともある(ゲイ男性は異性愛男性の約6倍の自殺率)
- セクシュアルマイノリティである自分自身に嫌悪を感じ、自分自身を受け入れることができない。
- カミングアウトをして、親に勘当された、人間関係が壊れた。
- アウティング(本人の了承を得ずに暴露される)され、職場や学校などでモラハラやセクハラ等の嫌がらせを受け、辞めざるをえなくなった。
抑圧 → 家族、学校、職場、地域などでの人間関係の不振 → 孤立・メンタリティ、生活困窮 = 負のスパイラル
という図式になることが多い。
そんな負のスパイラルに陥らせないためにも、「セクシュアルマイノリティ」であることを打ち明けられたら・・・。
多様な性への正しい理解と正しい知識で信頼できる存在 = 「アライ」になるということが大切だそうです。
最後に東日本大震災とセクシュアルマイノリティについても伺いました。
”性別や「家族・世帯」で分けられる為に避難所に行くことができなかった、医療面でホルモン療法やHIV治療への不安、医療機関でのトラブルが心配”などの課題があったそうです。
こうした災害で心が打ちのめされている時だからこそ「自分らしく生きる権利」の確立が必要だそうです。
区議会で議員対象に「セクシュアルマイノリティ」をテーマに研修会が開催できたのは大きな大きな一歩。
「パートナーシップ証明書の存在はセクシュアルマイノリティの人たちを見える姿に、健全化にむけて押し上げた」と仰っていたのが印象に残っています。
区民住宅の申込資格ページです
渋谷区の仮設庁舎の「だれでもトイレ」のピクトグラム、渋谷区区民住宅の申込資格の対象に「渋谷区パートナーシップ証明書を受けた者」という項目が入ったことなど、少しずつ区の制度やあり方も変化しています。
平成28年渋谷区の当初予算(案)の概要の中に「多様な性の理解に向けた啓発活動」という事業があり、事業目的は区役所全体がLGBT「アライ」となって、性的少数者のライフステージ等に対応した社会的困難の解消を努め、より多くの人たちが多様な性について理解者、支援者となるための意識啓発の促進すること、です。
そして事業概要には当事者と分野ごとの区職員との意見交換会やレインボーリボンの配布・普及、教職員へのセクシュアルマイノリティ研修などに予算がついています。
渋谷区挙げての取組みはこうした流れを益々後押しできると期待します。
今回の研修会をきっかけにこれからも様々なカタチで理解が前進していきますように…。