1.自閉症スペクトラム
(Autism Spectrum Disorder 略称:ASD)
(2013年から自閉症から自閉症スペクトラムという名称になりました)
スペクトラムとは連続体のこと。知的な遅れの有無、言葉の発達の有無などで境界線を引かず、自閉的傾向のある障がいを広くとらえたのが自閉スペクトラム症という分類です。アメリカの精神医学会の診断基準が改定されたのに伴い、新たに提唱されました。
よく目立つ特性(*個人差があります)
- 人とのかかわりやスムーズなコミュニケーションが苦手
喜怒哀楽の感情をあまり表現しない(あまり泣かない、目を合わせない、一人でほうっておかれてもさびしがらない、自分の言いたいことだけを言う、2才を過ぎても意味のある言葉がでてこない、会話が苦手、あいまいな言葉や省略された言葉が理解できない)
- 感覚がアンバランス
聴覚が敏感で大声で話しかけられたりすると怒られたと感じてパニックになってしまう、頭をなでられたりするのをイヤがる
- こだわりが強い
- 突然パニックに陥ることがある(教室を駆け回る、テレビできらいな番組がはじまると叫びながら暴れる)→ 自閉症スペクトラム症の子は混乱した気持ちを自分の力だけで処理していかなければなりません。そのため、言葉で気持ちを表現したり、だれかに助けを求めるのが苦手であるがために、泣き叫んで発散することしかできない場面を理解しなければなりません。
- 同じ行動をいつまでも何度でも繰り返す → 不安や緊張感をやわらげるための方法でもあります。
- 牛乳瓶のふたや道に落ちている石などを収集することにこだわりがある
- 同じ道順でないと帰れなくなる → 「いつもと変わらない」ということが心穏やかに生きる支えであるということを理解しましょう
- 自分の規則を人に押し付けがち
- 同時に2つ以上のことをするのが苦手など。
☆自閉症スペクトラム障害の人には記憶力や空間認知力などにずば抜けた能力をもっていることもあります。
世界中の国名と国旗を覚えている、難しい漢字を細部まで正確に書く、一度聞いた曲をすぐにピアノで演奏する、など。
興味のあることはとことん知りたい、覚えたいという特性があります。その子の興味を手掛かりに経験や他の人たちとのつながりを増やす機会となるとよいですね。
2. 注意欠陥・多動性障害ADHD
(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:略称 AD/HD)
忘れ物やなくしものが多い、何度も同じミスをする、何時も動き回って落ち着かない、など社会生活を送るうえで、色々な「困った」を引き起こしてしまいます。
「今やるべきこと」ではなく「今やりたいこと」が優先!
よく目立つ特性(*個人差があります)
- 不注意
忘れもの、なくしものが多いなど持ち物の管理ができない、ケアレスミスが多いなど学習面にもマイナスが
- 多動
小学生くらいになれば、普段は活発な子でも状況に合わせて、ある程度はじっと座っていられるようになります。しかしADHDの子は授業中でも常に落ち着かず、体のどこかが動いてしまったり、何か気になることがあると立ち歩いてしまい、授業を中断させてしまうこともあります。
- 衝動性
「やりたい!」がとめられず列に並ぶことができない、欲しいものをとってしまうなど集団のルールが守れない。「言いたい」気持ちが抑えられず、先生からの質問が終わる前に答えてしまったり、あてられてもいないのに答えてしまう。など
かかわりのポイント(親ができること)
- 叱る回数を減らし、本当に困っていることを解決する
- 気になる行動を書き出して具体的な対策を考える
- 一日の予定を決めてわかりやすくスケジュール表を書き出す
- ポイント制を導入してわかりやすい目標をつくり、やる気を引き出す
- 結果ではなく経過を見てほめる
- 交通事故(車の飛び出しなど)、水の事故(海やプール)、火の事故(ストーブなど)にはとくに注意すること。お子さんの行動を推測して目を離さないでそれを妨げる位置に
☆ADHDの子は、人よりゆっくりですが精神的にも成長するので、思春期を迎える頃には少し落ち着いてきたかもしれないと、と感じられるようになります。好きなものに熱中するエネルギーの強さ、直感力、困難があってもためらわずに突き進むパワーなどが伴い、スポーツや勉強など社会的に認められるものに向かった時は素晴らしい成果を上げることがあるそうです。
3. 学習障害
(Learning Disability:略称 LD)
知的な発達に大きな遅れはないものの、学習面で特有のつまずきや習得の困難さをもっています。
LDの特性(*個人差があります)
- 読むことが苦手
- 文字や行を飛ばして読んでしまう
- 小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」や「っ」を発音できない、など
- 書くことが苦手
- ひらがなや漢字を正しく書くこと。字を書くのに時間がかかる。
- 板書ができない
- 文字の大きさがバラバラでマスからはみ出る、など
- 聞くこと・話すことが苦手
- 聞き間違いが多い
- 相手の言うことが理解できない
- 筋道を立てて話すことができない、など
- 計算や推論が苦手
- 指を使わなと計算できない
- 図形・表・グラフ問題が理解できない
- 見直しや作業時間の配分ができない、など
かかわりのポイント
- 「頑張ればできるはず」と思われがちですが、がんばって出来ない自分に落ち込んで、やる気がさがってしまいます。やり方を一緒に考えながら「こうしてみたら?」と具体的な方法を提案する。
- お子さんのどこが苦手かどんなことが得意か知ること。「得意」なことを知ることは、どんな方法で補うことができるかを考える上で重要なポイント!
- 絵や補助器具をつかう
- 学校の先生と相談し、密に連携をする など
参考:「最新 発達障害時辞典 DSM-5対応」「発達障害の子どもの心がわかる本」「発達障害のある子を理解して育てる本」